婦人科の一般診療
婦人科では、女性におこりやすい症状や女性特有の病気を中心に診療いたします。
子宮や卵巣の病気の可能性はないか?ホルモンのバランスの異常はないか?感染症はないか?などを月経(生理)の様子やおりもの(帯下)の症状、超音波検査、おりもの検査などから調べていきます。月経に関しては生理痛、生理不順、生理の量が多い(過多月経)、PMS(月経前症候群)、不正出血のご相談が多くあります。
特にご相談の多い婦人科の疾患には月経困難症や、中高齢者では子宮脱/膀胱瘤があります。
月経困難症
月経時には、不要となった子宮の内膜を排出するために子宮が収縮します。その収縮に伴う月経痛やその他の諸症状が、日常生活に支障をきたすほどつらい場合では月経困難症といいます。
症状・検査
月経時あるいは月経直前から強い下腹部痛や腰痛を中心に腹部膨満感、嘔気、頭痛、疲労・脱力感、食欲不振、イライラ、下痢および憂うつなどの症状が出現します。
月経困難症は、子宮内膜症や子宮筋腫などに起因する器質性月経困難症と特定の疾患のない機能性月経困難症にわけられます。思春期の女性の月経困難症では、機能性のものが多いといわれます。器質性か機能性かの診断のために超音波検査や内診をおこないます。若年の方で検査が不安な方はご相談ください。
治療について
月経困難症の治療は、非ステロイド系消炎鎮痛薬(NSAIDs)が第一選択となります。NSAIDsでは効果が不十分な場合や副作用が問題となるとき、今後の子宮内膜症の予防を期待したいときには低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)が有効です。LEPに含まれる女性ホルモンの作用によって排卵が抑制されるため、月経の痛みが緩和されます。
また漢方薬も効果的に月経困難症を治療できる可能性があります。
- IUS(Intrauterine System 子宮内黄体ホルモン放出システム / 薬剤名:ミレーナ)
IUS(ミレーナ)は黄体ホルモン(女性ホルモン)を、子宮内で持続的に放出させるために子宮の中に器具(薬剤)を挿入留置する子宮内デバイスです。長期間の留置が可能(最長5年)で、女性ホルモンが子宮内に作用し、月経困難症や過多月経の症状を緩和します。
また器質性月経困難症の場合では原因疾患(子宮筋腫や子宮内膜症など)の治療を行うことも検討します。
リスク・副作用
副作用は、不正出血、腹痛、自然脱出(特に子宮筋腫を有する方に多い傾向があります)、骨盤炎症性疾患(感染症)、子宮外妊娠、ミレーナが子宮の壁に入り込むことによる子宮穿孔、卵巣のう胞の発生と卵巣のう胞の破裂などの可能性があります。
装着後は定期的な検診が必要です。
子宮脱、膀胱瘤
子宮脱や膀胱瘤は、「骨盤底のヘルニア」とも呼ばれます。子宮や膀胱、直腸などの骨盤内の臓器が腟壁と一緒になって腟の出口から脱出する疾患です。中高年女性に頻度の高い疾患です。骨盤底筋群と呼ばれる骨盤内の臓器を支える筋肉が緩むことによっておこり、妊娠や出産、加齢、肥満などが原因といわれています。
骨盤臓器脱は、子宮が出てくる場合を子宮脱、膀胱が出てくる場合を膀胱瘤、直腸が出てくる場合を直腸瘤とよばれますが、単一の臓器のみが出てくる場合は少なく、最近では総称して骨盤臓器脱と言われています。
治療について
子宮脱、膀胱瘤の治療では、根本的な治療は手術療法になりますが、対症療法としてペッサリーの挿入があります。当院では従来の硬く、曲がりにくいペッサリーに代わり、シリコーン樹脂製や、ナイロン樹脂製のリングを導入し、カラダに優しく、柔らかい素材で、挿入時の痛みに配慮したペッサリーを使用しています。また、Milexペッサリーによる治療も行なっています。Milexペッサリーは、身体に優しいシリコン素材であり、着脱時の痛みの軽減を図ることができ自己着脱もしやすいリングです。気になる症状がある方は、お気軽にご相談下さい。
月経移動
婦人科診療で、相談として比較的多くあるものに月経移動(生理移動)もあります。旅行や結婚式、試験、スポーツの試合等、大切なイベントの日が月経日と重ならないようにあらかじめ月経期間を調整していくことを月経移動と言います。この場合、月経予定日よりも前に月経が来るようにする、もしくは月経予定日よりも遅らせるという2種類の方法があります。
月経移動は自費診療になります。
月経予定日を早めたい場合は、ひとつ前の月経が開始されてから5日目までの間にピルの服用を開始します。その後、2週間ほどの期間はピルを飲み続けてから、ピルの服用を止めます。すると2~3日後には月経が始まります。
また月経予定日を遅らせる場合は、遅らせたい月経の開始予定日とされる7日前(10日から5日前)からピルを服用していきます。その後は、大事なイベント日までピルを飲み続けます。なお服用を止めた後は、2~3日後に月経が始まるようになります。
リスク・副作用
- プラノバール
- ノアルテン
嘔気、乳房の張り、むくみ、不正出血、下腹部の痛み、頭痛など特にプラノバールでは嘔気が強く出る方がいます。
その他に重篤な副作用として頻度は低いですが、血栓症があります。
性行為感染症(STD)
その他の婦人科一般診療には、性行為感染症や婦人科感染症についても婦人科の一般診療となります。
性行為感染症としては、性器クラミジア感染症、淋菌感染症、ヘルベス外陰炎、カンジダ腟炎/外陰炎、トリコモナス腟炎、があげられます。
女性の場合、性器クラジミア感染症や淋菌感染症に感染しても症状が軽度か無症状のことも多く、感染に気付かないこともあります。もしこのまま放置した場合、感染源である状況が続きますし、その結果これら感染症が自身の不妊症の原因にもなりえます。感染に心当たりがある場合やおりものの気になる変化があった時、もしくはパートナーの感染が判明した時には一度ご相談ください。
カンジダ腟炎/外陰炎、トリコモナス腟炎はおりものの変化や腟、外陰部のかゆみを認め、外陰ヘルペスは強い外陰部の痛みが出現します。
一般的に性行為感染症では外陰部のかゆみやおりもの異常、外陰や腹部の痛みなどが症状としてあげられます。
また、外陰部の腺組織(主にバルトリン腺)に常在菌等による感染が生じ、そこに膿が貯留し、外陰部が腫れ痛みを生じる、バルトリン腺の感染症(バルトリン腺膿瘍、バルトリン腺嚢胞)も比較的おこりえる疾患です。
このような心配な症状がありましたら、お一人で悩まれずにぜひご相談ください。
また、貧血や肩こりの症状に悩まされている女性は多く、女性ホルモンのバランスが乱れていることも考えられます。原因が特定できない体調不良にお困りの場合も婦人科外来でご相談ください。
内診については、診察時に必ず行うものではありません。診断をつける際にいくつかある検査(内診、超音波検査、おりもの検査、がん検査、血液検査等)の中のひとつです。必要に応じて検査は選択していきます。内診に抵抗がある方は、お腹の上から検査をおこなう経腹超音波検査で対応が可能なこともありますので、医師にお気軽にご相談ください。
婦人科一般でよくみられる症状
- 月経の異常(月経痛に悩んでいる、半年以上月経がこない、月経の周期が短い・長い、期間が長い、経血量が増えている 等)
- おりものの異常(色がついている、悪臭がする、量が多すぎる、血が混じる 等)
- 外陰部の異常(かゆみ、腫れ、できもの 等)
- 不正出血(月経時以外の出血、性交後の出血、閉経後の出血、血が便や尿に混じる 等)
- 腹部の異常(腹痛、排便痛、下腹部痛や下腹部の違和感 等)
- 子宮がさがっている感じがある、子宮内に異物感がある(子宮脱/膀胱瘤)
- 排尿の異常(尿が漏れる、尿が出にくい、頻尿、排尿時痛 等)
- 不妊相談
- 便秘
- 肌あれ
- 性交痛
- 腰痛